「ごめんなさい…」
テノールとソプラノの声が重なる。お互いに、ハッとした顔になった。
同じ言葉を口走るなんてこれが初めてだった。これを“波長が合った”というのだろうか。まじまじと見つめる目前の人が途端にプッと吹き出す。何だかおかしくなって、それにつられてしまった。
「これからもよろしくね。」
「はい!勿論です!!」
忘れかけていたクラシック音楽が再び耳に入ってくる。お会計を終えて、仲良くレストランを出る。私達はようやく同じ時間(とき)を刻み始めたんだ。そんな気持ちになった。
夏の夕方も、段々と暗さを増してきている。日が短くなっているのだろう。風も涼しくなっているような気がした。
「……今日、送って行こうか?」
「いえ、今日は遠慮しときます。お父さんが迎えに来てくれてる筈なんで。」
「そっかそっか……ちょっと残念だなぁ。」
クスッと笑い合った後、どちらからともなく「お休みなさい」を言った。去り行く後ろ姿を見届けながら、ふと黒と灰色の絵の具を塗りたくったような空を仰ぐ。
チカチカとまばらに光る星達。私の心も今、きっとこんな風に輝いているんだろう。
テノールとソプラノの声が重なる。お互いに、ハッとした顔になった。
同じ言葉を口走るなんてこれが初めてだった。これを“波長が合った”というのだろうか。まじまじと見つめる目前の人が途端にプッと吹き出す。何だかおかしくなって、それにつられてしまった。
「これからもよろしくね。」
「はい!勿論です!!」
忘れかけていたクラシック音楽が再び耳に入ってくる。お会計を終えて、仲良くレストランを出る。私達はようやく同じ時間(とき)を刻み始めたんだ。そんな気持ちになった。
夏の夕方も、段々と暗さを増してきている。日が短くなっているのだろう。風も涼しくなっているような気がした。
「……今日、送って行こうか?」
「いえ、今日は遠慮しときます。お父さんが迎えに来てくれてる筈なんで。」
「そっかそっか……ちょっと残念だなぁ。」
クスッと笑い合った後、どちらからともなく「お休みなさい」を言った。去り行く後ろ姿を見届けながら、ふと黒と灰色の絵の具を塗りたくったような空を仰ぐ。
チカチカとまばらに光る星達。私の心も今、きっとこんな風に輝いているんだろう。



