そんな憂い要素を抱えていた矢先のことだった。ある時、空渡さんからのメールの返信が一日経っても返ってこないことがあった。

仕事が忙しいんだと思っていた私は一人で納得していたのに。“遅れてごめん”だけで良かったのに──私の不安を煽るのが、彼は大得意らしい。



『遅くなってごめんね。飲み友達と飲んでたら遅くなって……相手は女性だけど、別に何もなかったから心配しないでね!』



 そう言うからには何もなかったんだと思いたい。でも、反って怪しいと思ってしまうのが女心。やっぱり空渡さんは大人の女性が良いのかな、お酒を飲みながら世間話やアダルトな会話をする方が良いのかな、と考えてしまった。

あと少しすれば、私もお酒が飲める。そしたら空渡さんと一緒に居酒屋にだって行ける。“あと少し”がとてつもなく長く感じた。

早く大人になって、大学を卒業して……空渡さんのご両親にも認められたいな。



 そして、遂にやってきた私の二十歳の誕生日。待ちに待ったその日は、5月末のよく晴れた日だった。

授業が終わった後、仲良しの三人に静かな場所に連れて行かれた。差し出された包み。みんなは「せーの」で口を開いた。