2月末日。空渡さんとの数回目のデートの日、私は大きな決意を胸に抱いて彼を待っていた。鞄の中には空渡さんへの思いを書き綴った手紙。手を伸ばして、そっと触れた。

時には少しの婉曲表現も必要だろう。でも、私は率直が一番だと思う。伝えたいことが伝わらないって、これ以上悲しいことはないから。



「……陽富さん。」



優しい声に振り向けば、笑顔の空渡さん。「おはようございます!」と声をかけ、緊張の一瞬。返された「おはよう」に安心して頬を緩めた。



「今日は和食でも食べに行こうか?」

「あ、良いですね。友達と遊びに行くと洋食が多いから楽しみです!」



並んで歩く私達。周りからは、一体どんな関係に見えるんだろう。瀬尾君が言ったみたいに親子だと思われるなんて嫌だ。私は自然と顔の筋肉を引き締めていた。



 しばらくして、一軒の落ち着いた料理店の隅に腰を下ろした。琴の音楽が流れる店内には大人な雰囲気が漂っている。

私達はそれぞれ注文を済ませると、他愛ない話をしながら料理が運ばれるのを待った。