私は絶対、好きになった人と結婚したい。見ず知らずの相手と顔を合わせて、第一印象と少しの言葉を交わしただけで結婚なんてまっぴらごめんだ。

朝早く、夜行バスが目的地に到着した。みんなと別れて帰りの電車に乗り込む。家の敷居を久し振りにまたいだのは、それから数時間後。家族への「ただいま」もそこそこに、部屋に向かっ荷物を置き、早速ペンを取った。



 これから先、空渡さんのように思える人が現れるかどうかなんて分からない。私は今、空渡さんが好きだと思っている。だからお付き合いしたいのに、空渡さんは何故か俯き加減。

これではいけない。私は空渡さんのことが好きって気持ちを、もう一度伝えなきゃ。



「……素直に、か…」



 文才なんてないから、相手の心を掴む言い回しも魅力的な手紙の書き方も知らない。だから私はなすがままに書いた。

親がとても厳しいということ。空渡さんが自分に好意を持ってくれているならとても嬉しいということ。ずっと待たせてごめんなさいという謝罪。そして、私も空渡さんが好きなので良ければ付き合って欲しいということ。これらを自分の言葉で、思った通りに便箋に綴った。

……どうか、届きますように。