帰りのバスに乗る直前に突然の集中豪雨に見舞われて酷い目に合ったけど、それも思い出のひとつかな。バスは名残を惜しむかのように、でも確実に私達を日常の世界へと連れ戻して行く。

車内で「また絶対みんなで行こうね」と、固く誓った。私の隣は奏音ちゃん、通路を隔てた向こう側に真里ちゃんと恵梨乃ちゃんが居る。

恵梨乃ちゃんが「次は空渡さんと来なきゃね！」とからかうように言った。私は照れながら、「うん…」と答える。内心では、そんな日が来るかどうかは分からないと考えていたけど。



　メールのやり取りをしていて、空渡さんを“そういう”場所に引っ張り込むのはどうなんだろう、という疑問が湧いた。私は出来れば行きたいな、とは思う。だけど空渡さんは、あまり賑やかな場所が好きではないようなのだ。

よくよく考えてみると、私は喋るのが大好きだから喫茶店に何時間も居座って話す方が向いているような気がする。

段々と面と向かって会話するのも慣れて、空渡さんも「陽富さんと話す時間がとても好きです」と言ってくれた。その言葉で私の心は、水面を蹴って宙返りする魚のように躍る。

私達には“私達のやり方”がある。この感情が、そう確信させてくれた。