ただひたすらあるのかないのかも分からない電話を待っているのも気疲れするから、私はファッション雑誌を読みながら、楽にしていることにした。

いつもの就寝時間になったら寝てしまえば良い。向こうの正確な勤務時間が分からないから仕方ないことだ。

“今冬のマストアイテム!”という記事を見つけて、今年の流行りは何かと目を光らせていたその時だった。



 ベッドの上の携帯が震える。ディスプレイには見慣れない番号。直後、待ちわびていた“彼”の名前が表示された。

空気が固まり、鼓動が一気に加速する。体中の体温が一ヶ所に集まる感覚。おぼつかない手つきで携帯を取り、通話ボタンを押した。



「も、もしもし…」

「佐藤さん?夜分遅くにすみません、高天です。こんばんは。」

「た、高天さん……はい、こんばんは!」

「あ、名前で呼んでくれて良いですよ?敬語も要りませんし。」



初めて聞く電話越しの声に聴覚が刺激される。何だかくすぐったいな。無意識の内に、瞼が閉じられていた。

見た目はちょっと怖いけど、声はこんなに優しいんだ。そのギャップにクスリと笑って、再び高天さんの言葉に耳を澄ませた。