──世間で冬と呼ばれる月になる手前のことだった。ハードな授業を終えてやっと家に帰れる、とホッとした気持ちで電車に乗った時。今日も運よく高天さんに会えた。
運転席に居る彼と目が合う。今日は近くに他のお客さんが居たから、私は軽く会釈しただけだった。彼はニコリと笑ってくれる。冷たいとか思われてないみたい……良かった。
電車が発車すると、いつものように空渡さんの後ろ姿を見つめる。凛々しい背中は背筋がピンと伸びていて、猫背気味な私とは対照的だ。
慌てて背筋を伸ばすと、何だかシャキッとした気分になった。電車は何度か停車を繰り返して、やがて10分程の長い停車時間のある駅に到着した。
スッと席を立った空渡さん。運賃箱の機械をスライドさせ、運転席から外に出てきた。私は乗車・下車するお客さんの定期をチェックするんだなと思い、邪魔にならないように一歩下がる。でも空渡さんは、何故かまっすぐに私の方を向いていた。
ゆっくりと、一枚の紙が差し出される。「高天空渡です」と書かれ、下には何やら携帯のものらしき11桁の番号。
……パニック状態のまま、気付いたら紙が手の中にあった。空渡さんは既に車外で定期のチェックをしていた。
運転席に居る彼と目が合う。今日は近くに他のお客さんが居たから、私は軽く会釈しただけだった。彼はニコリと笑ってくれる。冷たいとか思われてないみたい……良かった。
電車が発車すると、いつものように空渡さんの後ろ姿を見つめる。凛々しい背中は背筋がピンと伸びていて、猫背気味な私とは対照的だ。
慌てて背筋を伸ばすと、何だかシャキッとした気分になった。電車は何度か停車を繰り返して、やがて10分程の長い停車時間のある駅に到着した。
スッと席を立った空渡さん。運賃箱の機械をスライドさせ、運転席から外に出てきた。私は乗車・下車するお客さんの定期をチェックするんだなと思い、邪魔にならないように一歩下がる。でも空渡さんは、何故かまっすぐに私の方を向いていた。
ゆっくりと、一枚の紙が差し出される。「高天空渡です」と書かれ、下には何やら携帯のものらしき11桁の番号。
……パニック状態のまま、気付いたら紙が手の中にあった。空渡さんは既に車外で定期のチェックをしていた。



