「──あの時の時刻表、私今でも大事に持ってるんですよ。」

「えっ、本当?」

「ほら!」



 時刻表はもう変わってしまったのに、ずっと持ち続けている。いつも手帳の中に入っている、大切な大切な宝物だ。

ふと、私の携帯がブルブルと振動した。空渡さんに断りを入れてからメールをチェックしようすると、空渡さんがクスリと笑った。



「……え、何ですか?」

「いや、あの時は凄く緊張したなぁと思ってね。陽富さんに二回目の渡し物をした時。」

「あ、あれですか?私ほんとにびっくりしたんですからね!?心臓止まるかと思いました!!」

「大袈裟だよ。そんなに驚いたんだね。確かに目が点だったな…」



 クスクス笑う空渡さんだけど、本当にびっくりしたんだよ?空渡さんには、いつも驚かされてる気がするね。

たまには私も、驚かす側に回りたいなぁ……なんて。



注文した物が運ばれてくる。店員さんは愛想よく笑い、お辞儀をしてテーブルを離れて行った。

「いただきます」を言って食事を始める。パスタを口に運びながら、私は空渡さんと親密になるきっかけとなった日を思い返していた。