よく晴れた青空、景色がいつもより鮮やかに見える気持ちの良い天気の中、サトは道を急いでいた。
家を出ると、木々に囲まれた細い道を抜ける。急な下り坂を滑らぬよう足元を気にかけながらおりてゆくと、一面に水田が広がる。
舗装されていない道をずーっとずーっと駆け抜け、神社の敷地を通って近道をする。
この辺りまで来ると民家も増えてくる。
1軒目、2軒目、3軒目。
ここだ。ここまでサトは毎朝大急ぎで駆けてくる。
身なりを整え、駆けてきたようには見えぬ姿となってから、サトは呼び鈴をならす。
「おはよう。アヤ。」
「サト。今日も早いね。サトの家、あんなに遠いのに毎朝こんなに早くに来るの大変じゃない?いったい何時に起きてるの?」
「朝は自然と早く目が覚めるんだ。行こうか。」
「私の朝練に合わせなくてもいいんだよ?いつもごめんね?」
「僕も用事があるから。」

サトとアヤは高校生。
幼馴染であり、小学生の頃から共に通学している。
サトは口数の少ない男であったが、優しく、よく気の回る性格の持ち主で、スポーツや勉強の良くできる優秀な学生であった。
180cmをも超える身長と美しい顔立ちも目にとまってか、大変人気もある。
そんな彼を幼い頃から慕っているアヤは気が気ではなかった。