「でも、西のどうくつのドワーフはひっこしてしまって、なおせるのは人間の鍛冶屋さんだけなの」

姫は、また悲しそうな顔をしました。

「みんな、ご飯を食べられないわ」

そんなドラゴン姫を、ドラゴンばあさんはかわいそうに思いました。

「…それじゃ、わたしが姫に、魔法をかけてあげましょう」

「魔法?」

「そうよ。人間に変身する魔法」

ドラゴンばあさんはそういうと、池の中にもぐっていきました。

「ここだったかしら?」
あっちでブクブク。

「あら?あっちかしら?」
こっちでブクブク。

池の中を、ドラゴンばあさんがおよぎまわります。

…やがて、おっきな本をもったドラゴンばあさんが、池の中からあらわれました。

パラパラ…

めがねをかけて、ドラゴンばあさんが本をめくります。

「これかしら?」
あっちをパラパラ。

「あら?こっちかしら?」
こっちをパラパラ。

「あったわ。人間に変身する魔法」

ドラゴンばあさんが顔をあげ、姫に言いました。

「じゃあ、魔法をかけてあげましょう」

手にもったつえをふって、ドラゴンばあさんは呪文をとなえはじめました…。