「姫に褒められるのが一番嬉しい」と日向は赤になった信号から姫花に視線を移した

「またまた~」

素人の自分に褒められるのが一番嬉しいなんて、日向の優しさからくる言葉なのがわかって、姫花はテレくさかった・・

「本当だって・・ 変な先入観がない姫花の言葉は、そのままの本心でしょ? オレに媚を売る大人とも違うし、真っ赤な爪と唇の香水をぷんぷんさせて近寄ってくる品のない女の戯言とも違うしね♪」

不定期で、日向の演奏を聴けるのは本当に稀なのだが、【エリーに来れば、運がよければ神路日向に会える】というウワサがでて、最近は、日向目当ての年上の女性も客層に加わったので、日向のその人たちの事をいっているのだろうけど、品のない女って・・と姫花は思わず絶句した

そんな姫花に気づいたのかどうか知らないが、

「なんか・・最近の俺の人生、絶好調なんだよね 新曲もけっこう書けてるし、生まれてくる音にちゃんと魂も入ってるし・・姫花が隣にいてくれれば、なんか・・もう最強って感じ」と日向は笑った

そこまで自分が必要とされている事が嬉しく、車内でも離さない繋いだ手をギュッと握って、日向に微笑み返した

「ヒナのリサイタルに、友達も連れて行きたいんだけど、チケットもらえる?」

「いいけど? 潤也達にはもう渡してあるよ? 俺が準備出来るのは、P・A(プライベートエリア)のだけど?」

「潤也達のじゃないよ? 遠くから友達が来るんだ」と姫花は嬉しそう

「もしかして・・男とか?」

姫花の彼氏ではあるが、出会って間もないので、姫花の交友関係をほとんど知らない日向が不安げに姫花を見た

「男・・もいるかな?って、カップルだよ? だから二枚よろしくね」と姫花は微笑んだ

一瞬、ドキッとした日向だったが、その後に続いた”カップル”という言葉に安堵した。

そうして、2週間はアッと言う間に過ぎ、日向のリサイタルは翌日に控えていた