姫花に彼氏が出来たのは、アッという間に学園中を駆け巡った

その相手が、日向だというのに周囲は驚いていた

日向は夏休み前にヒョッコリ復学してきた、バイオリニストというくらいしか認知されていなかったからで、これが、モデルとか俳優なら同年代の認知も微妙に違ったんだろうけど、バイオリニスト・・なんて、この年代でそう知る人はいなかったから

姫花に関しては、思いっきり素人なんだけど、ガクの妹だし、今年のミスだし、学校のパンフのモデルということもあり、学園内での認知度はピカイチだったから

高嶺の花の姫花にちょっかいを出そうとする男はいなかったし、強いて言えば、通学・帰宅時のナンパぐらいなんだけど、日向の助手席での通学・帰宅が当たり前になるつつあったので、その心配もなかった

お昼は、今までどおり、りんや潤也達と過ごす時間にしたいと姫花に言われ、本来なら、姫花に想いを募らせる潤也と賢次との時間なんか持って欲しくないのだが、姫花がそう望むなら・・と日向も今までどおり、ガクや他のクラスメイトと過ごしている

姫花と日向は、心穏やかに秋を過ごしていた

「日向さん! この問題わかります?」

今日もガクは仕事で遅くなるらしく、姫花と日向で夕飯を済ませ、姫花はリビングで数学の問題集を広げていた

日向は、12月に向け、沢山の楽譜と睨めっこしていたのだが、姫花に聞かれ、ソファから立ち上がり、姫花の隣に座った

「どれ? あ~これね・・これは、この公式を使うんだよ・・・」と日向は姫花に説明していく

「あーそっか! なるほど~ 流石~」

と10分ほど格闘して解けなかった問題が、サラッと解けた事に大喜びの姫花は、日向を満面の笑みで見た

その笑顔に日向の心は飛び上がり、姫花の言葉など耳に入らず、しばらくそのまま見惚れていた

「・・・・・って、日向さん! 聞いてます?」

「日向さん・・・・」

そして、日向は吸い寄せられるように姫花にキスをした