夕飯は、ばあちゃんの畑で獲れた野菜が色んなものに大変身してくる

潤也は、ばあちゃんの「夏野菜の揚げ漬し」が大好きだ

かぼちゃやピーマン、ナスといった夏野菜を素揚げして、ばあちゃん特性タレに漬けてしばらくおいだけというシンプルな料理なのだが、本当に美味しかった

蒸かしたてのとうもろこしとか、味噌漬けの豚とか、ぬか漬けとか、いつもは体型維持を気にしてるりんでさえも、ご飯をおかわりしてしまうほどだった

大満足の夕食を終え、お風呂も済ませると時刻は11時をまわっていた

姫花は、ひとり散歩に来ていた

毎年、近くの小川にひとりでホタルを見にきているのだ

点いては消える淡い光を見ながら、ボーっと考えていた

夏休みに入った頃は、毎日が本当に辛かった

信頼していた友に裏切られたこともだが、この立場になって初めて、咲ちゃんがどれほど辛かったのか身にしみた

自分を好きだと言ってくれた男が、実は好きなんて口先だけで、本当はただの賭けだった・・なんてどれほど心がキシキシ痛んだのだろうか・・

自分はソレを助けるフリをして、ただ哀れんでいただけなのではないか・・・

本当に咲ちゃんだけの為の行動だったのだろうか・・

そんなことを考えすぎているうちに、毎日の猛暑も重なり、食欲が落ちていった

あの日、住み慣れた静か過ぎる大きな家にひとりで無性に寂しくなった

少しでも、人に会いたくて地下の「親ばか部屋」(ガクと姫花はそう呼んでいる)へ行ったんだっけ・・

気がつくと、病院で・・・

直ぐに退院はできたものの、それからが大変だった・・・

無理やりに食べさせようとするアニキ

毎日異常に高いテンションでノックもせずに姫花の部屋に上がりこんでくる潤也と賢次

毎日届く日向さんからのメッセージつきのバラの花束

バラは大好きな花の一つだけど、部屋にありすぎると、その匂いも気持ちが悪くなるだけだった・・

そんな時・・・

「姫・・隣いいかな?」

と姫花の隣に影が立った