どれくらい経っただろうか。膳には食が用意されていた。口に食べ物を運ぶ事も億劫で見るのも嫌だった。また寝る事を試みたがすぐに悪寒が酷く襲ってきた。

『熱だ。でもおかしい。身体が重い。今までにないだるさだ。』

熱には慣れていた。それだけに熱の予兆に裕樹の身体は敏感になっていた。身体のだるさに唇が震え遂には身体全体まで震えてきていた。ナースコールを捜した。でも手が動かない身体全体に誰かが乗っているような重さで身動きが取れない。血の味と匂いがすると思った時、鼻から頬を、そして耳から首筋を血が伝って落ちた。意識が朦朧としている。先程とは逆に頑なに裕樹は目を瞑りたくなかった。突然入院前に撮った写真が脳裏を横切った。

『やりたい事まだ有ったのに(笑)』