「はい」
『あんまり体験できる事じゃないからな。よく見ておこう。』

すっかり気持ちに余裕が出来ている。
裕樹がうとうとし始めた時だった。

「骨削るヤスリ無い?」
耳を疑った。部長の声だ。それに対しオペ室の看護師が

「ヤスリですか?ちょっと捜してきます。」

と答えた。デブリードのオペで通常ヤスリは使わない。しかも形成外科のオペだ。

『骨削るの?』

裕樹が想像した時だった。主治医の声がした。

「早乙女さん、坐骨を若干なだらかにする為に骨の表面削りますね。」

「はい。」

もう逆らえる状態ではない。
ガリガリガリガリッギュギュギュギュッ・・・
鈍い音がオペ室に響き渡り体全体の骨に伝導する。痛くはないが身体が悲鳴をあげている様な気がした。オペ開始1時間。喉が渇いた。裕樹は懸命に目を閉じた。
結局意識が有り続けた3時間、その間うつ伏せだった事も有ってかなり肩が痛かった。
湿布を処方してもらい肩に貼ったが効いているのかいないのか分からなかったが、少し気が紛れて眠りに就いた。数時間後目が覚めて瞬時に思った。
『身体がだるい。もう少し寝ていよう。きっと昨日のオペで疲れたんだ。』
再び眠りに就いた。