「俺が買うから、席取っておいて。」
手で払うような仕草をされて、私は注文列から離れ、空いていた奥の席につく。
一番目立たない場所を選んだつもりだけれど、周囲の視線を気にしてしまう……。
もし……
もし誰かに見つかったら……
私に明日はない。
ど、どうしよう………。
「お待たせ。」
コトっと音がして目の前に抹茶ラテが置かれる。
「あ、ありがとうございます。」
顔を上げるのが怖くて、私は抹茶ラテを見つめたまま頭を下げた。
「お礼は、目を見て言うものじゃない?」
うっ………
宮塚くんの鋭すぎる突っ込みに、私の心臓は色んな意味で煩く鳴っていた。
「ほら、早く。」
宮塚くんって……
宮塚くんって……
絶対Sです!!!!ドS!!!!
「一乃木さん?」
優しい声音に釣られてゆっくりと視線を上げた。
「あ、ありがとうございます……」
「ふふふ、何その面白い顔。」
人の顔見て笑うなんて………ひどいです。
「あの仲の良いお友達とは一緒じゃないんだ?」
宮塚くんが言うお友達はきっと杏華ちゃんと直樹くんのことだ。
「はい。直樹くんは部活で、杏華ちゃんとは一緒だったんですけど、学校に忘れ物取りに行ってて………」
「ああ、そう。じゃあ20分足らずで戻ってくるかな?」
「はい、多分……」
「なら、ちょうど良い暇潰しだね。」
宮塚くんはそう言いますけど……
私のとっては暇潰しだなんて言葉で片付けられない大事件ですよ……。


