薄塩味の恋愛





『春野くんも買い物?』


「うん。部活も休みだし、気分転換にてもと思ってね」






ふと窓に目をやる


店の前の桜の木が今にも咲き出しそうなほどどのつぼみも膨らんでいる


春のあたたかさと共にやってくる薄ピンク色の風は世界の色を新しくするようでなんだか気持ちが良い






「桜、好きなの?」



窓の外を見ている私に気付いた春野くんに聞かれた



『うん。なんか好き。なんでかわからないけど』




同じように春野くんも桜を見る




愛しいものを見るような目だったからつい胸が鳴る





『この間の球技会、すごかったよ、おめでとう』





「鈴木さんこそ。優勝できてよかったよ」



『あの時の体育館春野くん目当ての女子でぱんぱんでさー、…』





最初は全然見えなかったこと、後ろから押されたこと、なんとか前で見れたこと

なんだか懐かしくてついつい喋ってしまった







『ほんとこうやって考えると羨ましくなるよ、春野くんのこと。人気者で羨ましい』




「人気者?やめてよ」





春野くんは困った顔をして、少し悲しそうな表情になった




あれ、禁句だったかな、これって




「僕は人気者なんかじゃないよ。ただみんながそう思ってるだけ」





『いやいや、春野くんそみんなに優しいからあれは人気者になりますって』




「僕にだって好き嫌いはある。無理してる人はよくないと思うし、嫌いな人にはそれ相応の態度をとる」




目の表情から少し怒っているようにも思える




「あ!ごめん、つい…熱くなっちゃって…」




『ほら、すぐ謝ったり人のことを気遣えるとこ。優しいよ、春野くんって』






春野くんももう言い返すことがなく苦笑いをしていた






ココアもなくなってきたしそろそろ出よう



『そろそろ行こっか』




「うん、よかったら鈴木さんの買い物付き合ってもいいかな」





『もち。春野くんの意見も聞きたいし』





カランコロンとかわいらしい音を出すベルを響かせながらまだ少し冬の匂いが残る街へ出て行った







(桜…か)