「…先生、あの絵、あとどれくらいで完成しますか?」
誰かを描いてる絵。
どれくらいで描き終わるのか聞いたのは、あと何回ここに来れるのか知っておきたかったから。
「…何で?」
ポスターに絵を描きながら言った。
字はもう書き終わったから、先生の隣で描いてるところをジッと見つめる。
「もしかして、飽きちゃった?」
心なしか暗い先生の声が聞こえたかと思うと、顔をパッと上げた。
ふにゃんと笑ってるけど、どこか悲しそうな笑顔。
…そういう意味じゃないのに。
「違います、そういう意味じゃ…」
「いいんだよ。無理しなくても、完成したとこ見てくれれば十分だから」
「…違います。無理なんてしてません」
そんな悲しそうな顔をさせるために言ったわけじゃないのに。
先生にはそう聞こえたのかもしれない。



