ねぇ、先生。


俯いたから先生の顔は見えないけど、何も言わないってことはきっと困ってる。

あたしは生徒だから。

生徒にこんな気持ちを持たれても、先生は困るだけだから。


「…字、任せていいかな?」

「…はい」


やだなぁ。こんな空気。

先生は何も気づかなくていいのに。

もし、今のであたしの気持ちに気づいたなら、気づいてないふりをしてほしい。

何もなかったみたいにしててほしい。


「1日じゃ終わんないな」

そんな重い空気を紛らわすように、先生がポツリと呟いた。

「…そうですね」

「明日はバイト?」

どうしよう。

1日開けて、何でもないような顔でここに来る方がいいのかな。

ほんとはバイトなんてないけど。


「咲良さん?」