ごめん咲良、どうにも出来なかった。

それどころかこんな最低な頼みまで聞くことになって、俺はお前に蓮くんのこと諦めさせなきゃなんねぇ。

「…茉央ちゃんのこと、頼むよ」

何でこんなに想い合ってんのに、離れなきゃなんないわけ。

…おかしいだろ、こんなの。


「…分かってる」

蓮くんがどんな顔をしてるか分かってるから、もう顔も見れなかった。


美術準備室を出るとここに来た時より外は暗くなってて、意外と長い時間話してたんだな、なんて全然関係ないことを考えたりした。

考えたくなかった。

こうなるべきではなかったのに。

だけど、加地に何を言ったんだって問い詰めるつもりもなかった。

少し気持ちは分かる気がしたから。

俺だって前同じことをした。蓮くんに幸せになれるわけないって言ったことがあるから、加地には何も言えない。


…でもさ、やっぱり嫌だ。

俺は蓮くんのことで喜んだり照れたり泣いたり…一喜一憂してる咲良が好きだったんだから。