「…まぁ、何か事情があるんだろ。気になるなら自分から電話してみれば?」

中村さん、そんな簡単に…

あたしから先生に電話をかけたのは最初のあの一度だけ。それ以来一度も自分からかけてない。


「んー……」

「電話しか話す手段ねぇんだから、話したいならそうするしかないだろ」

「話したいっていうか……そうじゃなくて。ただ、急に連絡が来なくなったことが気になっただけなの。」

話したいっていうのも間違いではないけど、そっちの方が大きい。


「今日かかってこなかったらかけてみなよ。何か理由があるんだよ、きっと」

梨花の言葉に頷くと、少しだけ緊張して手のひらに汗が滲んだ。

「ったくお前さ、一応受験生なんだからな。恋愛するなとは言わないけど、本業忘れんなよ。」

中村さんは厳しいことを言いながらもあたしの頭をポンと優しく撫でた。

そんなに時間があるわけじゃないんだから、やることはやれってことだ。