ねぇ、先生。


「加地くんと何かあった?」

「え?」

「喧嘩してるように見えたから。」

梨花はいつでもこうしてあたしのちょっとした変化に気づいてくれる。

だから一緒にいて落ち着くのは昔から全く変わらない。多分これからもずっと、変わらないまま。


「…どうしよう梨花…」

「どうしたの?」

「加地くんに先生とのことバレちゃったの。リレーのときのやりとり見てたみたいで…」

バレたのも問題だけど、加地くんの言葉にもすごく動揺した。

渡さないとか、そんなこと言うような人だと思わなかったし、それをあたしに言ってくるなんて思ってもみなかった。


「茉央、落ち着いて。加地くんなら絶対に言いふらしたりしないから」

「違うの…、言いふらしたりしないって分かってる。そうじゃなくて…」

幸せになれない。そう言われたの。

間違えたことをしてるんだって、加地くんは強く何度も言った。


『フォークダンスに出る3年生の皆さんは入場門に集合してください』

アナウンスがかかって、梨花はあたしのことを気にかけながらも歩き出した。