ねぇ、先生。


「…幸せになれなくてもいい。」

少し緩んだ加地くんの手を振り払う。

油断したあたしが悪かった。気をつけなきゃならなかったのはあたしの方。

「それでも先生といたいの。」


きっと加地くんはこのことを言いふらそうとか、そんなことを考えてるわけじゃないんだと思う。

ただ間違えてるあたしにそれをちゃんと見ろって言ってるだけで、加地くんは何もおかしくない。

間違えてるのは完全にあたしの方だ。


「茉央っ」

「…あ、梨花」

「テントに戻ろ!」

加地くんと話してるうちに借り物競争は終わってしまったらしい。梨花は強引にあたしの手を引いて退場門へと向かう。


シロを探せばよかった。

少し探して諦めるんじゃなくて、最下位でもいいからシロにすればよかった。

そうすればこんな気持ちにならなかったのに。加地くんともこんな風になったりしなかったはず。

……なんて、シロに甘えすぎだ。

シロが知ってて黙ってくれてることを分かってるからこんなことを思うんだ。