ねぇ、先生。


「体力なさすぎだろ。」

「っ…普通だよ、普通。はぁー、転けちゃうかと思った。」

「1位なんだからもっと喜べば?」

暑そうに顔をパタパタと扇ぐ加地くんは、暑そうだけど別に疲れてるわけじゃなさそうだった。息も上がってない。

さすが加地くん。

あたしとは体力が全然違うわ。


「ありがとね、加地くん。」

「俺走っただけじゃん。」

「手引っ張ってくれたでしょ?」

「あー、うん。」

もう一度ありがと、と言ったけど加地くんは何も言わなかった。

どうしたんだろう、なんて思ったけどピストルの音が響いてそんなこともかき消されてしまった。

あたしの次にスタートした梨花の姿を目で追ってると、加地くんが小さな声であたしに言った。


「一つ聞いていい?」

「何?」

さっきのことなんてすっかり忘れてて、梨花を見たまま返事をした。完全に、油断してた。


「咲良の彼氏って、蓮くん?」


だから加地くんのその言葉に動揺しないように構えることも出来なかった。

「え…?」

震える声で聞き返すけど、多分あたしのその様子を見て加地くんはほとんど確信したんだと思う。

あたしから目をそらした。