ねぇ、先生。


その声のすぐ後、少しだけ前に出て、綺麗にゴールテープを切った。


「茉央!」

「勝った…?」

「勝ったよ!先生1位!」


ゴールテープを切ったのは先生で、そのあとに続いて陸上部の人もゴールした。ほんとに僅差で。

有言実行だ。先生らしいっていうか、やっぱり予感は当たってた。


ゴールした先生は走ってたときの雰囲気なんて今は少しもなくて、いつもみたいにふにゃんと笑った。

ギャップってやつ。ダメだよ先生、それを無意識にやっちゃってるんだから。

中村さんとハイタッチをしたあと先生は、あたしを見てまたふにゃんと笑う。

そんな先生を見てると、気持ちはモヤモヤしてるのに自然と頬が緩む。口パクで「おめでとう」と言うと先生はコクンと頷いて退場門へと走っていった。


「蓮くんすげー速いじゃん。」

後ろから聞こえた声に振り向くとシロが立ってて、その少し後ろに加地くんいるのも見えた。

加地くんはあたしと目が合うと、何か言いかけてパッと目をそらした。

…何、今の。