ねぇ、先生。


こんな風に先生を見られるのは嫌なのに、あたしの心臓はドキドキと強く波打って収まらなかった。

カッコいいって思うのはあたしだけじゃない。みんな一緒。


先生は中村さんが縮めた差を広げることなく陸上部と競い合う。

もしかして、中村さんと変わらないくらい速いの?本気で1位取っちゃう?

隣で梨花が何か言ってるけど、全然耳に入ってこなかった。

ここでこうして先生を見てると、凄く距離を感じる気がする。先生と生徒に戻ってしまったみたい。


ゴール付近まで同じくらいだったけど、最後の十メートルは2人ともスピードを上げて追い越そうとする。

先生に勝ってほしいって思う自分と、勝たないでと思う自分がいて。胸の前で握りしめた手の力を強めた。

でもほんとは…

「先生頑張れー!」

梨花の叫ぶ大きな声につられて


「先生っ、頑張って!」


大きな声を出してしまった。

ほんとは勝ってほしい。