「あっ、中村先生!」
梨花が指差す先にはバトンを受け取る中村さんの姿がある。陸上部との差は少しだけ開いてた。
だけど、中村さんがバトンを受け取った瞬間に大丈夫だ、なんて思った。
「…やっぱ速いね、中村先生。」
後ろの生徒との差を広げて、前にいる陸上部の生徒を追う。多分追いつくだろうなって安心した。
だって思ってた通り去年と変わらず凄く速いし、あの人元々陸上部だったみたいだから。
おまけに体育教師。
差はドンドン縮まっていって、もう少しで追い抜くってところで、先生にバトンが渡った。
中村さんの手から渡ったバトンは先生の手にしっかり握られて、いつもと違う雰囲気の先生が走り出す。
いつもの緩い雰囲気なんて今は少しも感じられなかった。
…やっぱりダメだよ先生。
「ちょっと茉央!先生速いよ!」
そんなカッコいい姿、こんなに大勢に見せちゃダメだよ。
雰囲気がガラリと変わった先生に、女の子たちが先生への黄色い歓声を口にする。



