「わお、傷つく。」

華麗にスルーされてしまったシロは苦笑いでガックリと項垂れる。

ここに来たばかりで慣れないのは分かるけど、ずっとあんな態度でいたら話しかけづらいよ。

ただでさえ不機嫌なのかなって思ってたのに、無視するなんてもう不機嫌以外の何物でもないでしょ。


「え、先生?」

「ん?」

またみんながガヤガヤと黒板の前で騒ぎ出した中、先生はそっと抜け出して加地くんの元へと歩き出す。

それはもう教師の顔で、あたしが止める必要もないと思ってしまった。


そのまま歩いて行った先生は、加地くんの前の席に横向きに座って話しかけてる。

意識をそっちに向ければ、騒がしい教室内でも少しだけ声が聞こえてきた。

みんなは先生が加地くんのところに行ったことになんか気づいてない。


「加地くん、走るの好き?」

「……嫌いですけど。」

「そっか。じゃあ綱引きとか。」

「嫌いです。」

「んー、じゃあリレーにでも出とく?」

「は?」

何で会話を聞いてるあたしの方がハラハラしてるんだろう。

先生ののんびりした口調に、加地くんがいつキレるか不安だった。だって会話が成り立ってない。