「ちょっと待てよ」

まだ、話終わってねぇだろ。

そう言いかけた俺の言葉を遮って


「大切すぎて簡単にそんなこと出来ないから。ほんとは触れんのも怖い。」


分かるだろ?とでも言うかのような目で俺を見て、教室を出て行こうとする。

分かるよ。俺もあいつのことずっと大切にしてきたつもりだから。


「あ、これ内緒ね。」

「は?」

「俺と茉央ちゃんの関係。」

うまく丸め込まれたような気がして、頷くことが出来なかった。

それでも先生には分かったんだろう。俺は誰にも言わないって。

好きな女を傷つけるようなことはしないって分かっててこんな風に釘を刺してるんだ。


「あと、これだけは言っとく。」

いつもみたいな笑顔で先生は

「手出さないでね。いくら生徒でもほんとにキレちゃいそうだから。」

教師としてじゃなく、男としての言葉を残して出て行った。