ねぇ、先生。



美術室の前につくと、やっぱりいつもみたいにドキドキする。

多分何度ここに来てもこの気持ちは変わらないんだろうな。


―ガラッ…

物音がしないから、きっとここに先生はいないんだろう。

あたしの方が先に体育館を出たんだから、当たり前なんだけど。いないと分かっててもドキドキしてしまうんだ。


美術準備室のドアを開けると、やっぱり先生はそこにいなかった。

布がかけられた大きなキャンバスがポツンとあって、いつも出てる絵の具が今日は出てない。

先生、ここに戻ってくるかな。

夏休みに入る前に少し話しておきたかったんだけど、もしかしたら忙しくて戻ってこないかも。


2つ並べられた木の椅子は、いつ見てもやっぱり近い位置にある。こんなに近くに座ってるんだ。

先生が絵を描くところをジッと見てるだけだから、実際近さなんてあまり気にしたことなかった。

だからこうして改めて見ると少し恥ずかしいような、擽ったい気持ちになる。

座ってみると、いつも見える景色に先生がいなくて少し寂しくなる。