ねぇ、先生。


「茉央は気にしなくていいよ。それより、美術室行ってきたら?明日から夏休みなんだし、当分会えないでしょ」

シロのことが気になったけど、梨花の言葉ですぐに頭の中が先生一色になる。

夏休みなんていらない、って思ったのはこれが初めてだと思う。

長い休みなんていらないから、先生といれる時間を増やしたい。


「うん、ごめんね、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

笑顔で送り出してくれる梨花。

手を振って小走りで美術室に向かうと、後ろからクスッと笑う梨花の声が微かに聞こえた。


「転けないようにねー!」

「大丈夫ー!」

きっと梨花もあたしのこんな姿を見たのは初めてだと思う。

こんなにも人を好きになったのは初めてだし、それを自分から梨花に話したのも初めてだったから。

だからかもしれない。表情とか行動とかに自然と出てたのかも。

…でもそれさえ抑えられないのは、やっぱりあたしが先生のことをそれだけ好きだってこと。