ねぇ、先生。


壇上でマイクに向かって話す彼は、スーツに身を包んでる。

短くてほどよくセットされた暗い茶髪も、幼い顔も見覚えがある。


「篠原蓮です。」


シノハラレン。

あたしがずっと聞きたかった名前。

…でも、今は聞きたくない。

どうしてここにいるんだろう。


無意識に梨花の腕をギュッと掴んでいて、ポツリ、口からこぼれ落ちた。

「…ビターさん…」

こんなところで、会いたくなかった。


「えっ、ビターさんって…」

驚いたように振り返った梨花の目にあたしはどう映ったのか知らないけど、きっと酷い顔だったに違いない。

全てを把握した梨花はあたしの手をギュッと握って離さなかった。