「…あのとき迷わず男の子に駆け寄った咲良さんを見て、思った。」
「何て?」
先生はあたしの手をキュッと握って、美術準備室の方に歩き出した。
照れた顔を隠すようにそっぽを向く。
「俺この子のこと好きになる、って。」
顔に熱が集中した。
それを隠すように俯く。
あのときレジに並んでたのが篠原先生でよかった。
もしも先生じゃなかったら、きっとこんな関係になってないし、多分お互いに店員とお客さんとしか思ってない。
「勘って当たるよね。俺ほんとに咲良さんのこと好きになってんだもん」
「先生の方が片思いの期間長いんだね」
「んふふ、そうみたいだね」
ふにゃんと笑う先生を見ててふと思った。
あたしは先生の″彼女″ってことでいいの?



