ねぇ、先生。


「俺、そのときレジに並んでたんだ。」

記憶を巡らせると、確かにレジに並んでた男の人がいたのは覚えてる。

だけど先生だったかと聞かれれば、そうだったと言い切ることはできない。


「ほんとに?ほんとに先生だったの?」

「うん、俺だよ」

「じゃああの男の子を交番に連れて行ってくれたのも先生?」

「あんなに困った顔されたら、助けないわけにいかないでしょ」

「…あのとき、何買った?」

「カフェオレと、ミルクチョコ」

少し照れ臭そうに言った先生は、あたしがたくさん質問するからおかしそうにクスクス笑ってた。

カフェオレとミルクチョコ。

それだけははっきり覚えてた。


「もっと髪色が明るかったからかな。今と雰囲気違ったのかも」

「そうなの?…あ、でもね、あたし優しそうな人だなって思ったのは覚えてるの」

だから男の子を任せた。

この人なら任せてもちゃんと交番に連れて行ってくれるって思ったから。

…きっと笑顔は今と変わらない、可愛くて優しい笑顔だったはず。