「何?」
あたしの知らないところで、先生はこんなにもあたしに関わってた。
もっと早く話しかければよかった、なんて今さら思うんだ。
「1年前の春にさ、俺1回咲良さんと話してんの。覚えてなさそうだけど」
1年前の春?
そんなに前に?
「この絵もさ、そのときの桜の木を思い出して描いたから、咲良さんが好きだって言ってくれて嬉しかった」
「だって、すごく綺麗だよ」
先生が描いた絵だって知って、もっともっと好きになったよ。
「俺もあのときそう思ったから描いたんだよ。俺がまだ大学院生のときなんだけど…咲良さんは高2になる前かな」
「…どんな話したの?」
どうして覚えてないんだろう。
何かもったいないなぁ。
「コンビニの外で泣いてる男の子がいて、咲良さんレジほったらかして外に出て行っちゃったんだけど、覚えてる?」
「あ、覚えてる!」
だってあたし、この絵を見てそのことを思い出すことがあるんだもん。



