ねぇ、先生。


「そ、俺が描いたの」

綺麗な絵だと思ったのは、これが一度目じゃない。あのときも見た瞬間に思ったんだ。

「何であのとき嘘ついたの?」

あたしが誰が描いたのか聞いたときは、覚えてないって言ってたのに。

少し驚いてたのは、照れてたのは、自分が描いた絵だったからなの?


「咲良さん言ってたじゃん、バイト先にこんな桜の木があるって。」

そんなこと言ったっけ?

緊張してたからかな、そんなこと言ってたなんて全く覚えてない。

「その通りなんだよ。だって俺、あのコンビニの前の桜の木を思い出しながら描いたから。」

だから焦った、なんて言ってあたしを見ると、ポンと頭を撫でる。


「咲良さんがあのコンビニの店員だってことは知ってたけど、知らないふりしようとしてたから。」

「何で?」

「俺不器用だから、うっかり好きなのバレるんじゃないかって思って」

「…気づかないよ、そんなの」

だってあなた先生でしょ?

「あはは、そう?…あ、でもそれだけじゃないんだよね」