ねぇ、先生。


「夜だとお客さんほとんどいないし、同じものだけ買ってればさすがに覚えてくれるでしょ?」

覚えて欲しかったってこと?

それっていつから?

話し聞いてる限り、あたしが好きになるよりももっと前からだ。


「…ずっと、あたしのこと好きだったの?」

そうストレートに聞けば、先生は絵を描いてた手をピタリと止めた。

あ、ストレート過ぎた?

それとも、少し自意識過剰だったかな。


「…やっぱり、覚えてないか。」

少し困ったようにふにゃんと笑って、立ち上がって部屋を出て行く。

振り返って手招きをするから、あたしも先生の後ろをついて歩いた。

「多分覚えてないだろうなって思ってたけど、実は少し期待してたんだよね」

何を?

そう聞こうとしたとき、先生は1枚の絵を指差して「これ、俺が描いたの」なんて言って笑った。


「え…これ、先生が?」

先生が指差したのは、文化祭のポスターを描いてるときにあたしが見つけた桜の木の絵だった。