「あー…」
先生はしまった、って顔をしたあと照れ臭そうに笑った。
少しだけ考えるような素振りを見せた後、いつもみたいにふにゃんと笑う。
「俺ね、苦いもの苦手なんだ」
「…あれだけ苦いものしか買っていかなかったのに?」
「うん。いつも買ってたけどビターチョコ好きじゃないし、ブラックコーヒーなんて一本飲めたことないからね」
じゃあ何で、なんて言葉は口に出さなくても表情で先生に伝わった。
「咲良さんに覚えてもらいたくて」
「え?」
「あのコンビニにはずっと行ってたけど、多分最初の半年くらいは咲良さん俺のことなんて全く見てなかったから」
最初の半年?
何だか混乱してきた。
先生、いつからあのコンビニに?
「わざといつも遅い時間に行って、同じものだけ買ってた。」
あたしが先生を気にし始めたのは、確か去年の冬くらいだった。
実際にいつから来てたかなんて覚えてないし、あたしが気づいてなかっただけでもっと前から来てたのかも。



