「俺のこと美術の教師に見えないって言ったり、まだ描き始めたばっかのキャンバス見て興味津々だったり。」
新学期の日とか、初めてここに来た日のこととか、そのときあたしが先生に言ったこととか。
全部覚えてくれてる。
「なかなかいないよね、そんな子」
あたしだって全部覚えてる。
だけど、思い返せば思い返すほど、胸が痛くて痛くてたまらない。
「あ、あったあった。はい、これ……」
輪ゴムを探してた先生が笑顔で振り返って、はい、とそれを差し出す。
先生の動きがピタリと止まった。
驚いた顔であたしをジッと見つめてる。
「…何で、泣いてんの…?」
気持ちを言えないのが、辛いんです。
伝わらないのが、辛いんです。
ここに来れば先生への気持ちが増すばかりで、なくなることは決してない。
叶うことは絶対にない。
…最初から分かってたこと。



