自分で言うのは少し憚る事かもしれないけれど、俺はそんなに悪い男ではないと自負している。何を突然、と思うかもしれないけど実際そうなのだ。平々凡々、可もなく不可もなく。月並みな表現で言うなら、中の上と言った所。それなりにいい会社で働き、収入も悪くない。人付き合いもソコソコで上司からの信頼も厚い。友達も多くはないが、少なくもない。何故こんな事を言うのか。恥ずかしげもなく、だらだらと。そう思われても不思議ではない。不思議ではないだろうが、何だろうが最初に述べておかなければ気が済まない。気が済まないどころでは収まらないから、だ。それ程、これから語るであろう【彼女】は普通ではないのである。それに付き合わされる俺はあくまで【彼女】のおまけであり、脇役に過ぎないと言う事を最初に言っておかなければならない。

人生の舞台に置いて、主人公は自分だなんて聞きなれた台詞が霞んでしまうくらいに【彼女】は女優でありヒロインであり主人公なのだ。

そう、痛いほどに。