「あっ、なんだ。諒ちゃんか……」


私は無意識にため息を吐く。


「“なんだ”はないだろ。あからさまに嫌な顔をしやがって……。悪かったな、吉岡先生じゃなくて」

「そ、そんな事言ってないじゃん!!」

「ってか、学校で“ちゃん”って呼ぶよな」


諒ちゃんはムッとしながら中に入って来る。


「いいじゃん。生徒は帰ったし、今は誰もいないんだから」

「そういう問題じゃないだろ……」


諒ちゃんはブツブツ言いながら椅子に座る。


「何?どうしたの?」

「よかったな」


諒ちゃんは笑顔で私を見る。


「えっ?何が?」

「とぼけんなって。お前、吉岡先生とうまくいったんだろ?」


えっ?


「な……、何で知って……」


今日は、今まで諒ちゃんと話していない。

なのに、何で知っているの?