保健室の甘い時間

「あの時は……、俺、先生とあまり話した事無かったし、先生の事よく知らなかったから」


そうだよね。

あの頃は、吉岡先生とあまり話をした事は無かった。

だけど、フラれた時、そんな事一言も言われてない。

それなら、あの時、そう言ってくれてもよかったのだけど。


「成長したい、って言っていたのは?」

「あぁ、それは……。あの頃、よく告白されていて……、成長したいのは嘘ではないけど、あんな風に言ったらみんな諦めてくれるから。だから、岩瀬先生にもそう言っただけです。先生の事、今までの人達と同じように断ったのだけど……」


吉岡先生は、私の背中に回していた腕を離し、私の両腕を掴む。


そして、私の顔を覗き込み


「岩瀬先生が……、生徒達と楽しそうに接していたり、時には真剣に接している姿を見ていたら……。先生から目が離せなくなって……。気が付いたら、岩瀬先生の事、好きになっていたんです」


吉岡先生は真剣に気持ちをぶつけてくれているのだけど、やっぱり私はまだ信じられなかった。

夢を見ているみたいで……