ー琳sideー
………
はぁ、なんで速水の言葉を
断れなかったんだろう。
いつもならきちんと断れたのに…。
はぁ。
そう思いながら速水の触れた
手首に手を重ねていた。
「おい。」
『何?』
「ついたけど?」
本当だ。いつの間にか
裏校門についていた。放課後
だからか人が少なかった。
恭哉達はどこだろう…?
「りーーーーん!!」
『…っ』
門の周り辺りを見渡していると
横から勢いよく誰かに抱きつかれた。
『…………』
「もうー遅いから心配いちゃったよー」
そう言いながら
私を抱きしめてる。
『…ひ「おい、離れろ」
私の言葉を遮って
速水が宏樹を睨み低くそう呟いた。
「…ん?何かな…?」
「…そいつから離れろっ。」
「なんで君にそんな事
言われないといけないのかな?」
……私の目の前で口喧嘩?
しないで欲しい。
迷惑なんだけど、ていうか
何故速水は宏樹に対してこんなに
敵意むき出しにしているの?
初めて合ったにも関わらず…。
しかも、宏樹も、宏樹で
抱きしめる力を強くして
まるで速水を
挑発してるような…。
『ねー「おい、そこの2人止めろ。
宏樹は、琳から離れろ。」』
……なんでさっきから
言葉を遮られるんだ。
「えーでも凪ー
僕からじゃないんだよ?
こいつから売ってきたんだよ?
だったら買わないと?な?」
同意を求めるように
宏樹は速水に目をむけた。
速水は応答せず
ただ宏樹を睨んでる。
「良いから言うことを聞け。」
凪はそんな2人を無視して
そう言った。
普通に言っているだけなのに
威圧感がある。
「ちぇー分かったよ。」
宏樹はそう言うと離してくれた。
『凪…久しぶり』
「久しぶりです、琳。」
凪は優しく微笑んだ。
その顔をみて、この世にもういない
あの人を思い出す。
だからかな?無意識に凪に近づき
抱きついてしまった。
「……」
凪は何も言わず抱きしめ
返してくれた。
多分理由は
分かっているんだろうな。
良く一緒にいた時
龍が居なくなって寂しい時とかに
凪に抱きしめてもらってたから。
唯一私が心を許せる相手。
そして……。
私を一番恨んでる相手…。

