アイツは
予想外の事ばかりやる。
俺は自分の身体より何周りも大きいバイクを軽々と運転する女なんて見た事はない。 しかも結構慣れた様子だった。
そして普通の女だったら族のたまり場に来て不良がたくさんいたらビビるもんだろ?それなのにアイツはビビる事もなく逆に部屋を見回していた。
アイツと会って間もないけど俺の中での普通がアイツによって壊されていってる気がする。
幹部の奴しか入れない部屋に入るとアイツは勝手に好きな所に座った。しかも俺と彼方の誘いを断って。
座った所が匠の所…。
匠は女が嫌いだから絶対五月蝿いだろうな。
アイツが座って間もなく匠はやってきて俺の予想通り匠はアイツについてギャーギャー文句を言ってる。
それに比べてアイツは
冷静に対応している。
匠が
〈お前が殺されそうになっても俺は助けてやんねーからな〉
と言った瞬間アイツは少し間を置いてから
〈別に構わないよ〉
と言った。
その時のアイツの表情は恐怖すら覚える程だった。死なんか恐れてないって言われてるようだった。こんな近くにいるのに遠く離れているような…そんな感じがした。
そんなアイツを見て匠は言葉すら出なくなっていた。そんな匠を無視してアイツは彼方の隣に座った。
そして1つアイツの事が分かったと思う。
アイツは可愛い奴に弱い。蜜を見た時のアイツは何か表情が柔らかかった。それに蜜の頼みを断る事が出来なかったし。
“リンリン”なんて絶対嫌なはずなのに。もし彼方や俺が言ったら絶対嫌だと言ってるだろうな…。まぁ絶対そんなきしょい言葉言わないけどな。
みんなが帰り部屋の中は俺とアイツだけとなった。
だから言ってみたんだ
何で名前で呼ばないか。そしたら俺も呼んでないって言ってきた。
その時初めて名前で呼んだ。いや呼んだっていうよりつい呼んでしまったって感じだ。
そしたらアイツは少しビクッとして無理だって言った。だから今日はもう何言っても無理だろうなと思って諦めた。
家に送るって言えば“嫌”って即答で言われた。そんなに家を知られるのが嫌なのか?
もうアイツは俺がどんな事言ったって家を送らせるわけないからまたもや俺が諦めた。
本当に初めてだよ
こんな女…。

