杏ちゃんが出てってから
俺達にはしばらく沈黙が流れた。

「ごめん、なんか」

沈黙を破ったのはゆかりん。

「いや、こっちこそ……
それで、何があったの?」

するとゆかりんは今までの出来事を
一つ一つ丁寧に教えてくれた。

「そっか……」

過去を言われた実彩の心はどうだったんだろう。

それも信用してる杏ちゃんから言われたんだから
きっと、苦しくて悲しくて
どうしようもなかったんだろうな……

なんてことを思って
眠っている実彩のおでこにそっと手を置く。

「ゆかりんは、その過去のこと知ってるの?」
「ううん、全く。
だから何言ってるのかわかんなくて
ちょっと悲しくなった」

ゆかりんはシュンとして近くに置いてある
ビーズクッションに座る。

「でも、実彩がいつか話すって言ってくれたから
その時を待ってみようと思うんだ」

ふふっと笑って俺をまじまじ見るゆかりん。

「ん?何?俺の顔になんかついてる?」
「いや?
隆、実彩のこと好きだなーと思って」

ニヤニヤしてたのはこのせいか……

「俺って諦め悪いよな……
振られて、拒絶されてるのに実彩のこと好きなんて」
「別にいいんじゃない?隆らしくて。
本当に好きな奴はいくら嫌なこと言われても
追いかけ続けとしてしまうもんだって
誰かが言ってたよ?」

それって……

「それ秀がゆかりん取り戻しに行った時の
話でしょ?」
「え!?何で知ってるの?」
「バカップルだねー。
秀結婚する時そんなこと俺達に話してた」
「えー、お喋りだなー」

なんて言いながらもゆかりんは少し嬉しそう。

「私秀と結婚してよかったって思うんだ。
まぁ、確かに今までいろいろあったけど、
本当に好きな人と出逢って付き合って……
私って幸せ者だなーって思ったりするの。
だから、私隆には諦めないでほしい。
みーちゃんはあまり素直になれないけど、
隆の前ではかわいく笑ってるからさ。
みーちゃんのこと一番大事にしてるの
隆ってちゃんとわかってるから」

ゆかりんは近くに置いてある水を口に含んで
遠くから実彩を見る。

「なんか、みーちゃんって私に似てるんだよね」
「え?」
「正確には私達?
今のみーちゃん昔の私にそっくり。
いっぱい悩んで、いっぱい泣いて。
隆も秀にそっくり。
みーちゃんばっかり守って
自分のことなんて全然見てない。
秀もバカみたいに私に過保護で
自分は怪我とかしてボロボロなのに。
でもそんな必死に私を守ってくれる
秀を好きになったから……
みーちゃんも同じこと思ってるんじゃない?」

ー~♪~♪~♪

するとゆかりんの携帯が鳴った。

ゆかりんは画面を見てクスッと笑った。

「噂をしてたら、秀からの電話」

ゆかりんは部屋から出て秀と笑顔で会話をしていた。

俺は実彩を見ていると何だか眠たくなってきて
気づけば実彩の手とカフェオレを握って
実彩の元でスヤスヤと眠っていた。