「前実彩に言ったよね!?
過去なんて忘れて恋愛したほうがいいって。
なのに、逆に過去に縛られ過ぎてるじゃん!!
素直になれないのは過去のせいにして……
今の自分を変えようとしないで……
今の自分が悪いなんてこれっぽっちも思ってない!!」

やめてよ……なんでそんなこと言うの?

「それに、何でも勝手に一人で決めて、
自分だけがつらいなんて思ってる。
本当は実彩のせいで傷ついてる人は何人もいるのに」
「杏奈!!」
「ゆかりんだってそうでしょ!?
自分が作った企画台無しにされて、
本当は悔しいって思ってるんじゃないの!?」

思わずゆかりんを見る。

ゆかりんは何も言えないという顔で
唇を噛み締めて杏奈を見つめる。

「実彩は何もわかってないよ!!
実彩のせいで何人の人に迷惑掛かってると
思ってるの!?
そろそろわかってよ!!
さっきも言ったけど、
実彩だけがつらいんじゃないの!!
私だってつらいんだよ!!」

杏奈の目からは綺麗な雫がぽたぽたと落ちてくる。

「実彩知ってる?
私、最近真ちゃんと会えないの」

その言葉で私はハッとした。

私のせいで二人は会えなくなっているんだと。

私のせいで一番巻き込まれているのは
杏奈なんだと……

「会いたいけど、会う機会だって減ってる。
でもそれは決して実彩が悪いんじゃない。
私がただ会いづらいだけで、実彩は何も悪くない。
ただ……」

杏奈は私から目を逸らす。

「今の実彩は私より酷いと思う。
自分から逃げて、隆からも逃げて……
卑怯だと思う……
過去からずっと逃げて、それが一番気に喰わない」

杏奈はギュッと拳を握る。

「ねぇ、実彩、過去と向き合って?
自分から逃げないで……
それじゃないと……私きっと実彩のこと
嫌いになる……」

嫌い……

その言葉で一気に体がこわばる。

“お前なんて好きじゃない
勘違いすんな、むしろ嫌い”

忘れかけてた過去が昨日のように鮮明に思いだす。