「実彩……」

元気にしてた?

そう聞こうと思った瞬間……

ーバッ!!

実彩はいきなり振り返って来た道を
ハイヒールで走って行く。

「おい!?実彩!!」

俺はなぜかわからないけど体が勝手に動いて
そのまま実彩を追いかける。

その時……頭に浮かんだのは光のあの言葉……

ー「実彩ちゃん、辻のこと避けてるんじゃね?」

そんな言葉がぐるぐる回りながら
俺は実彩の細い腕をギュッと掴んだ。

「……なんで逃げるんだよ」
「ごめん……」

実彩は俺を見ようとはしない。

「元気にしてた?」
「うん、まぁね」
「嘘言うなよ」
「……え?」

ようやく実彩は振り返り俺を見る。

実彩の顔は秀が言ってた通り
青白く血の気が引いていてやつれていた。

「こんなに細くなって、全然食べてないんだろ?」
「……そんなことないよ」

再び下に目線を落とす実彩。

「実彩、俺のこと避けてる?」

聞きたかった質問をすると
実彩は困惑した顔をして俺を見た。

「なんで避けるの?」
「隆弘」

久しぶりに呼ばれた名前に体がビクッと反応する。

けれど、俺を見る目は光などどこにもない。

「悪いんだけど、私隆弘とはもう会えない」
「……え?」

突然の事で頭がついていかない。

「だから、隆弘も私の前に二度と現れないで……」

実彩は目に涙を溜めて寂しそうに
俺の手を振り払って俺から走って離れて行った。

しばらく俺はそこに立ち尽くしたままだった。

「はは……」

俺はそのまま軽く笑った。

「なんだよ、今回もあいつの勘は当たるのか」

その言葉とは対照的に俺の目からは
冷たく冷え切った涙が頬を伝った。