「隆!!」

直人の怒ったような声が耳を通る。

「笑える?
ふざけんな!!
俺と実彩の間にはな、
仕事が出来なくなるくらい
深刻な問題があるんだよ!!
実彩はな、あんな小さくて華奢な体に
色んなものを抱えてんだ!!
お前が好きな杏ちゃんとは違うんだよ!!」

そう言った瞬間ハッとする。

これは絶対に言っては行けない言葉だったと。

「なんやねんそれ……
あーちゃんの何がわかるんや!!」

今度は真司が俺の胸倉を掴む。

「あーちゃんだってな、沢山つらい思いしとるんや!!
実彩ちゃんと比べられたり、
上手く行かないことがあって
泣きながら俺に言ってくれた時だってあるんや!!
実彩ちゃんよりあーちゃんのほうが
つらくないなんて口が裂けても言ったらあかん!!」
「もういい加減やめろよ」

呆れた様子の光が俺達を引き離す。

「どっちもつらいことはわかったからよ。
頼むからお前らで喧嘩するのはやめろ。
みんな人それぞれ悩みはあるんだよ。
自分だけがつらいなんて思うな」

そう言って光は席に着いて足を組んだ。

「ごめん……」
「おん、こっちこそ」

俺と真司はそのまま静かに自分の席についた。

「じゃあ、さっきの続きで……」

____________

「辻」

ミーティングが終わると光が話しかけてきた。

「実彩ちゃんのことなんだけどよ……」

その言葉で俺は不快になる。

確かこいつも実彩のこと好きだったなって……

「俺、昨日会ったんだけどよ……」
「……それで?」
「実彩ちゃんに会ってないの、辻だけだと思う」
「……は?」

その言葉を理解するのに時間が掛かった。

「昨日、実彩ちゃんは辻以外の
Chargeメンバーと居酒屋にいた」
「……は?どういうことだよ」
「正確には直人とゆかりんを含む
杏と辻以外のメンバー。
杏は来たくないって言って……
辻を誘うなって、ゆかりんが」

ゆかりんが……?

「でも普通にゆかりんと辻は
二人で飲みに行く時だってあるだろ?
だからゆかりんが嫌なんじゃないと思うけど……
ここから俺の勘なんだけどよ」

光の勘は恐ろしい程鋭くて当たる。

だから何を言われるかドキドキしていると……

「辻、実彩ちゃんに避けられてるんじゃね?」