「はよ……」
「おぅ」

あれから約2ヵ月。

実彩は無事に復帰して
ライブもバリバリこなしている。

もちろん、俺達とのデュエットの話も
すっかりなくなった。

それと共に恋愛報道なんて
風が通り過ぎて嘘のように思える。

変わったこと……それは……

チラッと溜まり場のドアを見る。

実彩はもちろん、杏ちゃんも
ここには訪れなくなったこと。

ゆかりんも秀と直人に用がある時にしか
顔を出さなくなっていた。

「何だか最近つまんねーよな?」

光の声でみんなは頷く。

「寂しいっていうか、なんていうか……
会話がない」

確かに……

「男だけっちゅーのもつらいもんやな」

そういう真司は何だか最近大人しい。

「真司は……あの後杏ちゃんと会ってるのか?」
「全然?BARに行っても会えへんや。
何だか避けられとる気分やわ」

まぁ、真司は杏ちゃんにぞっこんだったしな……

落ち込むのもあたりまえか……。

「そういえば最近友香理も何か変なんだよな」
「え?ゆかりんまで!?」
「結婚式の準備しないとなーなんて言ったら
お願いだから今はやめてって……
前まではウエディングドレス着せてくれるの
一日も早く待ってるとか言ってたのに
何かおかしいんだよな……」

秀も困ったように首を傾げる。

「PEACE大丈夫なのか?
直人に聞いてもまぁ、なんとかなる
みたいなことは言ってたけど……」

心配そうにしている3人の会話を
俺はただ耳に挟みながら
携帯ゲームで遊んでいた。

「そういえば、前実彩ちゃんに会ったんだけど」

秀のそんな言葉に思わず指を止める。

「凄いやつれた顔してて今にも倒れそうなくらい。
大丈夫?って声掛けたら無理して笑って
スタジオの中入っていったけど」

秀の言葉に尋常じゃないくらい
体から汗がこぼれ落ちる。

「……隆どしたんや?」
「え?」
「深刻そうな顔しとるで?」

真司の心配そうな顔にハッとする。

「いや、別になんでもねーよ」

そうだ、俺だけがつらいんじゃないんだ。

いつもクールな真司だってきっと
杏ちゃんに会えなくてつらいんだ。

俺だけがつらいんじゃない……

そう言い聞かせて俺は再び指を動かし始めた。