「本当にごめんなさい、ゆかりん……
せっかく作ってくれたのに
これじゃ台無しだよね……」

腕を止めたくてしょうがないのに
腕が言うことを聞いてくれない。

「大丈夫だけど……みーちゃんこそ大丈夫?」

ゆかりんは私の手から粉チーズを取り上げて
私をそっと抱きしめる。

「ゆかりん、ごめんね……
何かわかんないけど粉チーズ見てると……
隆弘のこと思い出しちゃったの……」

隆弘のことを思う私の気持ちが
凄く粉チーズに似ていた……

「私の隆弘を思う気持ちが
ただ儚く降り積もる雪みたいで……
そんな私が虚しくて、許せなくて……
その手が止まらなかったの……」
「わかった、わかったよ?みーちゃん」

ゆかりんは私の涙を優しく拭ってくれる。

「私、どうしようもないくらい
隆弘が好きみたい……」

でも、でも……私は過去に恐怖を持っている。

「私がこんな性格じゃなかったら
普通に恋して、普通に楽しく
過ごしていたのかな……」
「そんなことない。
みーちゃんは十分素敵な人間でしょ?」
「私がこんなに弱くなかったら
こんなに傷つくことなんてなかったのに」

自分が嫌になる……。

ゆかりんも私を見て目に涙を溜めている。

「この後、隆弘には私じゃない人が隣にいて
隆弘はあの笑顔をその子に見せるのかな」

ゆかりんにこんな素直に
感情をぶちまけたのは初めてだ。

でも、ゆかりんは
そんな私を理解してくれようとしている。

「みーちゃんにはつらい過去があって、
どうしてもそこから踏み外せないんだね」

私の過去を何も教えてないのに
一生懸命私の苦しみを埋めようとしてくれる。

「私、ゆかりんが凄く羨ましい……」
「……え?」
「だって、ゆかりん
あんなに思ってくれる人がいて、
幸せを手にしてるんだもん」
「……ごめんね?みーちゃん」

違う、違うの。

ゆかりんを攻めてるんじゃないの。

「秀と思い合ってて、
毎日笑ってて凄い幸せそうで、
こっちまで嬉しくなる」

等々ゆかりんの目から一筋の雫がごぼれた。

「隆弘は私のこと好きって言ってくれた。
私も隆弘のことが凄い好き……」

ゆかりんは私を見て
手をギュッと握ってくれる。

「私達だって、両思いなのに……
なんで……なんで近づけないのよぉ……!!」

隆弘、こんな私を好きになってくれて
ありがと……

でもごめんね?

こんなに弱くて素直じゃなくて過去に縛られて……

私凄い贅沢だけど……

「隆弘……会いたいよぉ……」